第100回例会
「つまづきの石 ―曹洞宗の差別事象をふり返る―」
中尾 良信(文学部教授=日本中世禅宗史)
1979年8月、アメリカ合衆国プリンストンにおける第三回世界宗教者平和会議席上、当時の全日本仏教会会長の発言が、重大な部落差別を含むものであるという報道がなされた結果、日本の仏教各宗派は、自らに内在する差別意識や放置されてきた差別事象と向き合うことを要請されました。特に全日本仏教会会長が曹洞宗宗務総長であったこともあり、曹洞宗では人権擁護推進本部を設置し、宗門内の人権問題解消と僧侶の人権意識啓発への取り組みを進めてきました。
しかしながら、その後も宗門内部において重大な差別事件が惹起し、その都度、運動体との糾弾交渉を含め、宗門としての対応を余儀なくされました。「つまづきの石」とは、その糾弾交渉の場において、宗門が人権問題に真摯に取り組むべきことを示唆して、運動体から投げかけられた言葉です。
宗門で惹起した差別事件を検証する過程で明らかになってきたのは、教義の説き方や布教方法、葬儀を含めた宗教活動と寺院のあり方に、さまざまな問題が内在していることでした。しかもそれは、次第に解消されてきたというわけではなく、社会状況の変化に伴って、新たな問題が惹起する可能性をはらんできたといえるのです。
今回の報告では、1980年代以降、曹洞宗において採り上げられてきた人権問題をふり返り、それが寺院だけではなく、社会全体の人権意識とも関わることを指摘し、今後に予想される問題への対処についても考えてみたいと考えています。
【日時】2017年7月13日(木曜)午後6時~
【会場】本学教堂2階会議室
※無料・申込不要・どなたにもご参加いただけます。