第108回例会(詳細)
反『優生学講座』
~相模原障害者殺傷事件を踏まえた障害者福祉の課題について
藤井 渉(社会福祉学部准教授=障害者問題・障害者福祉)
国家が優生学をもとに国民の命に優劣をつけ、「劣等」とみなした存在を排除していったのが優生政策です。優生政策は日本だけでなく世界的な動きでもあったわけですが、残念ながら日本ではむしろ戦後に大きく展開し、優生保護法によって多くの人に傷跡を刻んできました。いまになってようやくその補償に目線が注がれつつありますが、相模原障害者殺傷事件に対する社会の向き合い方を見ていると、これからはさらに命の優劣が問われていく時代になり、障害者の福祉をめぐる情勢はますます予断を許さない状況に突き進んでいくと私は予想しています。
命の選別にどう抗していくのか。1931年から33年にかけて、日本に優生学をかなり体系的に輸入し、論じられたのが『優生学講座』(雄山閣)というシリーズです。当時の優生学の全体像が分かる文献で、私が把握しているだけでも9冊の出版があり、優生学の普及とともに優生政策の理論的な土台を具体的に準備したものともいえます。ここでは『優生学講座』で扱われた論点をいくつか取り上げ、命の選別とその国家介入の歴史について批判的にひもときながら、「これから」の障害者福祉を考えるための知恵を探りたいと思います。
【日 時】2019年7月3日(水曜)午後6時~
【会 場】本学教堂2階会議室
※無料・申込不要・どなたでも参加いただけます。