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2022年度入学式式辞

 このたび晴れて花園大学に入学された皆さん、入学おめでとうございます。花園大学の教職員を代表してお祝い申し上げます。また、この日を心待ちになさっておられたご家族・保護者の皆様にも心よりお祝い申し上げます。
 皆さんは、コロナ禍の中で高校生活を送られ、また、入学者選抜に向かう準備をされてきました。その間、いろいろなご苦労があったことと思います。それらを乗り越え、晴れてこの花園大学のキャンパスに立たれたことは素晴らしいことであると考えます。

 花園大学の建学の精神は「禅的仏教精神による人格の陶冶」です。その目的は臨済宗の宗祖である臨済禅師が「随所に主と作れば、立処皆な真なり」と言われるように、どのような状況であっても主体的に行動できる自立性・自律性を養成することです。
 本年、花園大学は創立百五十周年を迎えます。花園大学は明治五年(一八七二年)妙心寺山内に「般若林」が創建されたことにより始まりました。まさに、明治四年に廃藩置県が行われ明治政府が名実ともに国民国家として確立したその翌年であり、「学制」が公布され、日本に近代的な学校制度が導入された年でもあります。「学制」が目的とするのは「人々自(みずか)ら其身を立て、其産(さん)を治め、其業(ぎょう)昌(さかん)にする」こと、すなわち、「学制」でいう立身とは、建学の精神で謡っている自立性・自律性なのです。

 また、花園大学は国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」の基本的哲学である「誰一人取り残さない ―leave no one behind―」を基本に、学生一人ひとりを大切にしたていねいな教育に取り組んでまいります。大学においても多様性(ダイバーシティー)が増しています。多様性は社会的・経済的活力の源泉であるとも考えられています。花園大学は多様性を一つの大学という組織の中に包摂し「誰一人取り残さない」活動を展開します。

 次に、皆さんが大学生活を始めるにあたって、ぜひ心にとどめておいていただきたいことを申し上げます。

 まず、「初心忘るべからず」です。今の気持ちを大切にし、よく覚えておいてください。四年後の自分に手紙を書いておいてもいいでしょう。なぜ、今ここにいるのか。何をしようと考えているのか。
 そして、一年後、その初心を思い返してみてください。一年前の自分とどう違っているか。どのような成長があったか。どう自分は変わったか。変わらなかったものはなにか。それを毎年繰り返してください。そして、四年後に今日の自分とその時の自分を比較し、四年間の学生生活を振り返ってください。大学における四年間は、自分をどこに導いていったか。

 第二に、困ったことがあり思い悩むときは、周囲の人と対話を重ねてください。家族、友人、先輩、そして、花園大学の教職員。
 周囲の人と話したとしても直接の答は与えてくれないかもしれません。引き続き考え悩むかもしれません。しかしながら、対話をすることによって、自分の考えが整理できます。自分が何をしたいか。自分が悩んでいることが、本当はどのようなことなのか。
 自分の心根も変わります。これまで気づかなかった黒松の花の伸びようとする勢いに感動したり、巣づくりに励むつばめが目の前を飛翔するのに驚いたり。周囲の人との対話は、皆さんの心の糧になり、成長の肥やしとなります。

 第三に、「根無し草」にならないでください。
 政治学者の佐々木毅先生がおっしゃっているとおり、世界のどこでも通用し、活躍する人材、すなわち、グローバル人材は究極的には社会的に見て「根無し草」です。
 他方、どの社会も個性と歴史を持ち、地域に根を生やしている以上、「根無し草」ばかりを集めても社会をつくることができません。社会と地域の将来を慮り、多くの人々を糾合して新しい姿を描き、実践していく人材には何よりも地域性へのこだわりが必要です。専門性の高い政治や行政、地域経済の担い手なしに社会の再生産は不可能です。
 人は具体的な人との関係の中に生きているのです。家族や地域や職場の仲間という具体的な人との関係の中で人は生き、それらの人々との間で愛や友情や信頼を醸成し、そこにこだわりを持ち、生きる意味を感じるのです。

 そして、さらに具体的なお願いを一つ申し上げます。それは、新型コロナウイルス感染症防止についてであります。花園大学でも新規感染者が発生しています。入学間もない時期は、開放感にまかせて、羽目を外したくなってしまうものですが、新入生の皆様には、大人数での活動や飲食は自粛するなど新型コロナ対策を徹底していただくようお願いします。

 最後に、皆さんのこれからの大学生活に熱いエールを送り、私の式辞を終えることとします。

令和四年 四月四日
花園大学学長 磯田文雄