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2022年度前期学位記授与式を挙行しました

残暑はあるもののキャンパスを吹く風に秋の気配を感じる9/30(金)、本学教堂において「2022年度前期学位記授与式」を挙行しました。

本日をもちまして、6名の学生および1名の大学院生の皆さんが卒業・修了を迎えました。
花園大学での学生生活は有意義なものとなりましたでしょうか?

ここで培った経験を糧に、それぞれのフィールドでこれからの人生を歩んでいってください。

ご卒業・修了、おめでとうございます。


【 式辞 】

 本日ここに学位記を受け取られた皆さん、おめでとうございます。花園大学教職員を代表して、心よりお祝いを申し上げます。皆さんをこれまで励まし支えてくださったご家族の方々にもお祝いと感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。
 この秋、大学院を卒業する方は1名で、その内訳は修士課程文学研究科1名です。学部生は6名が卒業を迎え、その内訳は文学部1名、社会福祉学部5名です。本日、学位記を手にされ、ここに至るまでの苦労や仲間と共に経験した感動など、様々な思いを巡らせていることと思います。ここまで勉学や研究に励みこの卒業式を迎えられたことは、皆さんの向上心の賜物でありその努力に敬意を表します。
 とりわけ皆さんは、2020年初頭に始まった新型コロナウイルス感染症がまん延する中で大学生活を送られました。コロナは確実に皆さんの大学生活を変えてしまいました。大学の中も外も大きく変わりました。私たち教職員が感じるのは、学生さんの心からの歓喜の声が聞こえなくなったということ、今まで以上にスマホの世界の中に生きていることです。
 しかしながら、コロナ禍においても皆さんは成長しています。入学されたころを思い出していただけば、より深くより広く学問を学んでいることが確認できます。さまざまな実習で社会と自己のかかわり方を模索し人生という美しい布を織ってきたことに気づきます。

 コロナは続いています。そして、たとえコロナが終焉したとしても、人類はコロナの前に戻ることはないでしょう。インターネットに過度に依存した知的、人間的活動はこれからも続くでしょう。インターネット空間は、虚構の世界、巨大なグローバル経済が操作する意図に満ち満ちた世界です。
 しかしながら、本学の建学の精神は「禅的仏教精神による人格の陶冶」です。その目的は臨済宗の宗祖である臨済禅師が「随処に主と作れば、立処皆な真なり」と言われるように、どの様な状況であっても主体的に行動できる、自立性・自律性を養成することです。この建学の精神の下で学ばれた皆さんは自ら立つ自律の精神を獲得されています。このインターネット空間においても、もちろん実存の社会においても、自立性・自律性を保ち、自らの人生を切り拓いていってください。

 戦後の高度経済成長を支えた団塊の世代の人々は、明日は今日よりもよくなるという経験を重ねてきました。努力すれば道が開ける、汗をかいて働けば報われる。若者の未来は可能性と光に満ち満ちていると。
 しかしながら、1991年にバブルが崩壊して以降その光景は一変しました。明日は今日よりも良くなるという経験を一度も味わっていない世代が続いています。明日は今日よりもひどくはなってもよくはならないと感じている人たちがいかに多いことか。
 加えて、本年2月にロシアのウクライナ侵攻が始まりました。子どもたちを含む多くの民間人が犠牲になっています。世界経済は混乱し、人々は民主主義そのものに疑念を抱くようになりました。歴史の進歩の先には民主主義と自由主義が必ず実現するというような理想論は捨てるべきなのでしょうか。このような政治的、社会的状況下で皆さんを社会に送り出すことになりました。
 しかし、私は希望を失っていません。佐々木毅先生が論ずるように、「自由民主主義は基本的に漸進主義と政治的・社会的選択を基盤にするものであって、そのこと自体、展望を難しくする最大の原因と考えられ」ます。だからこそ、ハンナ・アレントが論ずる「許し」と罰のメカニズム、そして、「約束の力」によって、21世紀を切り拓いていくことができると信じているからです。佐々木毅先生が次のように解説しています。

 「復讐」が過去の行為にとらわれ続けることに根拠を置いているのに対し、「許し」は過去の行為とその結果から双方を解放し、自由にするものである。そして「許し」の代替物になっているのが罰である。罰は許されるものであることを踏まえた上での対応であり、「復讐」とは全く位相を異にする。
 約束は主体の多様性を前提にしつつ、人間の自由の持つ不確実さとその中で発生しうる予見不可能さの大海に対して、予見可能性の「小島」を人為的に創出しようという試みである。

 私は人を信じます。特に若者の力を信じています。皆さん、苦難を恐れず、際限のない社会の「大海」へ漕ぎ出していってください。

 卒業そして修了、誠におめでとうございます。

令和42022)年930
花園大学学長 磯田 文雄


学位記授与式の様子

0930-2.jpg学位記授与

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磯田文雄学長による式辞

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卒業生代表による謝辞

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